QCC ニュース (2006年6月5日号)
 
     
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首都直下地震による東京の被害想定
東京湾北部地震M6.9では死者2,800人

 

 

 東京都防災会議は、このほど「首都直下地震による東京の被害想定」をまとめた。この想定条件は、震源地は東京湾北部と多摩直下で、時期は冬の夕方6時と就寝中の明け方5時となっている。想定される最大のM(マグニチュード)7.3と、発生頻度の高いM6.9の2条件で想定いる。
 2想定のうち、東京湾北部地震のM6.9、冬期夕方6時、風速6メートル(毎秒)での被害想定は以下の通り。

  1. 人的被害:28,000人が死亡(50%は火災が原因)。7万5,000人が負傷(うち3万2,000人が建物倒壊、2万4,000人が家具などの転倒が原因)。
  2. .ゆれ・液状化・急傾斜地崩壊による建物被害:都内270万棟のうち、6万棟が全壊、21万5,000棟が半壊。
  3. 火災による建物被害:18万3,000棟が焼失、焼失面積は53万平方メートル。
  4. 道路・鉄道被害:震度6強の地域で発生。道路の橋梁被害は288か所、このうち復旧に長期間を要する大被害は10か所。鉄道橋梁・高架橋被害は316か所、このうち大被害は14か所。
  5. ライフライン被害と復旧:電力の停電率9%、通信の不通率6%、ガスの供給停止率6%。通信14日、ガス22日、上水道21日、下水道14日。
  6. 避難者:発災直後は166万人、ピークは一日後の271万人。
  7. 帰宅困難者:発災直後は、東京駅20万人、渋谷駅18万人、新宿駅17万人などターミナル駅は大勢の人で混乱し、交通機関の回復まで帰宅できない者は448万人。また、主要ターミナル駅別帰宅困難者は、東京駅14万人、渋谷駅10万人、新宿駅や品川駅でそれぞれ9万人となっている。
  8. エレベーター閉じ込め台数:閉じ込めが発生するエレベーターは7,500台、ほとんどの区部で発生する。(広報 東京都 第726号引用)

  東京都の人口は1,258万6,642人。昼間の人口は神奈川・埼玉・千葉など近郊からの通勤・通学人口増を加えれば1,400万人を超える。冬の夕方6時のM6.9はまさに会社・学校から帰宅途中か、居酒屋で熱燗を交わし始めた時刻。大パニックが起きること必至。
  その東京で10年後オリンピック開催するとすれば、その時に大地震発生を想定したら、どんな被害になるのか、知りたいものである。ちなみにオリンピック主要施設は、メインスタジアム(中央区晴海)、オリンピック選手村(江東区有明)、メディアセンター(中央区築地)と、東京湾北部地区にある。

 
 
   
 

上海環球金融中心(Z4)現地からの現況報告を紹介
鉄骨建て方は地上155メートルを超える

 

 

  人気の六本木ヒルズ、表参道ヒルズを手がけた森ビルは、中国・上海市浦東区の金融・貿易地区(Z4街区)に世界最高級の高さを誇る「上海環球金融中心(上海ワールドファイナンシャルセンター)」を建設中で、その鉄骨躯体の建て方が東京・赤坂のアーク森ビル(地上153メートル)を超え、建設工事は順調に進んでいる。同プロジェクト呼称を、森ビルおよび関係者間では建設地のZ4街区を採って、「Z4」と呼んでいる。
  Z4ビルの建設概要は、構造=S造・一部SRC造、RC造。階高=地下3階・地上101階建て。地上高さ=492メートル。延べ床面積=約38万1,600平方メートル。竣工予定は北京五輪開催の08年初頭で、名実とも中国最大の超超高層ビルである。
  このビルの建設に当たって、森ビルは建築主・設計総括の立場から社員ら約100名を現地に派遣し、施工管理の中国建築工程総公司をはじめ現地の設計事務所・施工設備関係者との共同作業を担当している。
  このたび、森ビル・現地設計者から本社設計部に宛てたEメールによる現況報告を入手。その内容の一部がジャーナリックな文体で、Z4の桁外れの規模を分かりやすく解説し、また現地ならでのユニークな話にまとめられている。興味深く拝読させて頂いたので、関係者の承認を得、その一部を抜粋・転載します。

■溶接の話
  現場では18−19FLのベルトトラスの溶接が行われています。ベルトトラスは厚さ100ミリの鋼材で構成されており、上下弦材(H=1200)の一辺を溶接するのには170回の重ね溶接が必要で、1回当たり10分掛かりますので連続作業で28時間を要します。
  この間に雨が降ると作業は中断を余儀なくされます。溶接工は簡単な食事を摂るものの、不眠で頑張り通します。ちなみに、Z4の総溶接長さは約20万キロメートルで地球5周分となります。

■桜(ソメイヨシノ)の話
  Z4の外構では、世紀大道沿いに18本のソメイヨシノを植える計画としています。昨年中に26本の唾付けを行い、植木屋で大事に育てているところで、今週中に開花状況の
検査を行い18本の選別を行う予定でいます。
  ところで、現在中国にソメイヨシノの苗木を輸入することは禁止されています。上海市内でもソメイヨシノが見られるのは魯迅公園などほんの数える程度です。Z4で買い付ける苗木は浙江省寧波郊外の植木屋で、輸入禁止前に中国に持ち込まれたソメイヨシノの枝を接木し代々育てているもので、これにはちょっとした逸話があります。
  日本の奈良・平安時代の書の源流とも言われ、今でも書聖と称えられる4世紀の中国の書家「王義之(オウギシ)」の陵墓が浙江省の古都・紹興にあります。
  この陵墓に彼の書を慕う日本の書道家の永保秋光氏(当時帝京大学教授)等が20本のソメイヨシノを日本から持ち込んで植えたのだそうです。そして、その桜の枝を接木で増やしたそうです。
お察しの通り、これがZ4に植えられる桜並木の先祖ということになります。上海の文化都心を目指すZ4に相応しいエピソードを備えたソメイヨシノです。

■鉄骨の話
  Z4では最大厚100ミリの鋼材を含む大量の鉄骨が使われています。躯体用に使用される総鉄骨数量は7万4千トンです。別に鋼管杭が約2万トン使われていますので、総鉄骨量は約9万4千トンになります。
同じ面積の六本木ヒルズの森タワーが8万トンで設計されていますが、工期短縮のVEで地下躯体を鉄骨造に変更した分が1万トンありますので合計9万トンとなっています。
  構造上の経済設計を量る指標に延べ面積1平方メートル当たりの鉄骨量(キログラム)がありますが、これで森ビルの主要ビルや他のビルと比較してみると以下となります。
   ・横浜ランドマーク  (h=282。) 240 「ゥ/平方。
   ・都庁第一庁舎    (h=242同) 230 同
   ・六六森タワー   (h=238同) 210 同 ・・・工期短縮VEを除く
   ・上海Z4      (h=492同) 195 同 ・・・鋼管杭を除く
   ・愛宕森タワー    (h=180同) 170 同
   ・アーク森ビル    (h=150同) 140 同
  現場を見ると鉄骨をふんだんに使っているように見えますが、超超高層ビルの割には経済設計がなされていることがご理解いただけますでしょうか?
※六本木ヒルズ・森タワーは基準階が22メートルのロングスパンであることや曲線平面による小梁増等の要因によって鉄骨量が増加傾向にあります。

■コンクリートの話
  昨年2月に打設されたタワー部耐圧版では42時間連続で30,440立方メートルのコンクリートを打設しました。11箇所の生コンプラントが42時間連続供給に応じてくれたお陰でもありますが、恐らくギネスブック上の記録だと思われます。Z4で使用するコンクリートの総数量は約26万立方メートルです。現在の進捗率は50.5%です。
  同じ延べ床面積38万平方メートルの森タワーが約21万立方メートルですので5万立方メートルほど多い計算です。これは地上部が純鉄骨の森タワーに対して、Z4は地上部に巨大RCのメガコラムと岩盤並みの耐圧版を擁しているのが主な理由です。
  この26万立方メートルを搬送するのに5立方メートル積みのミキサー車が52,000台必要となります。これを日本の高速道路を時速100キロメートルで走行させたら、車間距離100メートルで5,200キロメートルの数珠繋ぎとなります。これは日本の高速道路網総延長8,344キロメートルの62%を占有する数量となります。

  以上4話を紹介しましたが、如何でしたか。Z4の巨大さの一端が分かったと思いますが。それにしても、何でソメイヨシノの苗木が輸入禁止なのか不可思議とは思いませんか?
  日本企業が中国に超超高層ビルを建てる。それには想像を越える難問に直面し、難解な折衝を乗り越えながら、一つひとつを誠実に対応しなくては進めないことは分かります。そうした中でも、このように余裕のある報告(Eメール)が定期的に送られてくることは本社関係者にとっても心強く感じられるでしょう。

 
 
   
 

<今月の雑感>
分譲マンションの住宅性能評価申請が急増
耐震偽装後の不安・信頼回復の手段か!

 

 

  建築業界新聞の報道にとると、「耐震偽装問題以降、分譲マンションに住宅性能表示制度を導入する動きが加速している」と指摘している。
  国土交通省と住宅性能評価機関等連絡協議会のまとめによると、06年度2月の設計性能評価で2万0,944戸と1か月間の交付件数で初めて2万戸を上回った。特徴的なのがデベロッパーなど建築主になっている分譲マンションの交付申請は、05年12月までは平均して7,500戸前後が、06年1月1満1,043戸、2月1万3,151戸で、偽装発覚前の最多交付数の1.5倍前後となった。このことは、従来申請手続きなどの諸費用を分譲価格に転嫁できなかった中小デベロッパーからの申請が増えたためとみられる。
  住宅性能表示制度は、住宅品質確保促進法に基づき、耐震性能やバリアフリーなどの性能を共通の基準を用いて評価する任意の制度。設計段階に図面で審査する「設計住宅性能評価」と施工段階をチェックする「建設住宅性能評価」の2つがあり、建設性能評価は、設計住宅性能評価を受けていないと交付申請できない制度。(www.sumai-info.jp/seino/
  分譲マンションの供給側が、マンションの性能表示をすることは、住宅購入者の「供給側への不信感、住宅性能への不安感」を少しでも和らげ、解消しようとするもので営業手段の一つである。それでも国交省は建築基準法の改正などを踏まえ、性能評価制度の見直しも検討していく方針。性能評価と建築確認は法体系が異なる別個の制度だが、建築確認の構造審査が厳格化されることから性能評価の見直しを進めていくものの、任意制度は変えず、全建築物への義務付けも行わないとしている。
  俗に建築業界は「建築六法でリスクヘッジしている」と言われているが、設計・施工・販売において何らかのお墨付きがなくては、安心・信頼が得られないとすれば寂しいものがある。