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建築鉄骨構造技術支援協会(略称、SASST)は2月2日、東京・三田の建築会館ホールにて、シンポジウム「建築基準法改正の影響を考える」を開催。建築鉄骨に携わる設計・ゼネコン・ファブリケーターなどの関係技術者130余名が聴講した。
同協会の田中淳夫会長は「改正基準法後、さまざまな問題が出ており、国民経済にも影響を及ぼしている。行政や審査機関の担当者からホットな問題についての意見を聞き、参加者と議論を交わしたい」とあいさつした。以下、その講演要旨を紹介する。
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【趣旨説明】
内田 三雄氏(日建設計コンストラクション・マネジメント シニアエンジニア)
改正建築基準法の施行以来、さまざまな現象が浮上している。国交省が建築確認手続きの要点冊子を作るなどしているが、必ずしも上手く運営されていない。
そこで、建築鉄骨業界の関係者によって、どんな問題が起き、現在どの程度解決しているのかを検証するために企画したので、忌憚のない意見を交わしたい。
改正法の周知と円滑な運営に尽力
【建築基準法の改正について】
小野田 吉純氏(国土交通省 建築指導課課長補佐)
改正基準法施行後の混乱については、やり方に至らぬ点、問題点があったこと率直に認めざるを得ない。深くお詫びしたい。(法改正の趣旨・ポイントを解説し)建築確認手続きの要点、ICBA(建築行政情報センター)のホームページでの最新情報やQ&A、「構造関係技術基準解説書」講習会開催、セーフティネット貸付制度の紹介。
注目の「大臣認定プログラム」については、現在仮認定をしており、2月中には大臣認定を終え、全国8会場で説明会を開くとし、改正内容の周知と円滑な運営に努力する意向を示した。
必要以上の審査厳格で戸惑いも
【改正基準法と確認・検査】
春原 匡利氏(東京建築検査機構 確認検査事業部構造技術部長)
確認審査や適合性判定の停滞・遅延の要因は、改正法の公布から施行までが短期間すぎて、周知できなかったことと、改正内容が構造関係だけでなく、規則改正や確認審査に関する指針も制定されており、建築工事に関する業務全般に及んでいることが理解されていなかった。
また、確認審査の厳格化がパブリックコメントで明らかになり、申請側にも審査側にも戸惑いがあった。計画変更確認の扱いが実態工事と乖離していることについては、確認申請時点で、予測可能なものと予測できないものとの二段構えで行くべである。細々とした変更は認める方向で対応すべきである。
認定プログラムの有効性に疑問
【適合性判定の現場で起きていること】
有山 定男氏(エスアイエス構造設計 所長)
適合性判定員の立場から(構造計算書の)膨大な申請図書の確認審査業務の精査も大変だ。内容に食い違いがあれば、再申請となり確認判定料のコスト負担にもなる。事前審査で不適合な箇所やヒューマンエラーなどの遣り取りで1、2ヵ月を要し、適判にはザッと3ヵ月間は掛かる。
したがって月間20物件。判定ができても後戻りするものもあり、一人当たりの業務負担が増え処理能力が落ちている。適判からの疑問を提出すねと、どうしたら通るのかといった問い合わせが来ることもある。
円滑な適合性判定の遂行には、大臣認定プログラムを使った構造計算が注目されているが、その検証方法のルートからみても、その有効性にメリットは余り感じられない。
軽微な変更は構造建築士の判断で
【改正基準法の構造設計者への影響】
古谷 一美氏(フケタ設計 構造部次長)
鉄骨造の平屋建て、延べ床面積約909平方メートル、軒高7.4メートルの物件をモデルケースとした審査日数で、受理前審査で不整合や細かなチェックなどに43日、許可が出て申請となり適判に回るのが11日、適合判定で56日の計120日間掛かったとしても、適合判定に要する時間が読めないため、現状の工期を建築主に充分説明する必要がある。
今後の対応としては、適合性判定の事前相談の受付けでは、構造種別ごとに専門の相談窓口を設けてほしい。また、現場での軽微な変更は構造建築士の判断で認められるようにすべきとの提言をした。
建築事情に即した体制整備が急務
【改正基準法の鉄骨建築物の施工に対する影響】
護 雅典氏(竹中工務店 建築技術部課長)
計画変更の定義の曖昧さについて、設計者が施工計画の相談をした施工会社と、実際の施工を受注した会社が違った場合。受注した会社が検討した仮設計画・施工計画が建築主の利益になっても、計画変更になるとの心配から変更の是非を判断できない。
また、変更作業を嫌う設計者は、施工会社からのコストダウンやVE提案を受け付けなくなる可能性がある。さらに、建築主の事情による工事中の設計変更が難しく、建築事情の実態に合致していないことは国内需要を減少させる要因になる。「軽微な変更」や「構造体の変更」の定義を明確にし、設計者・施工会社・鉄骨ファブに分かりやすくする体制整備を提唱した。
ファブは現況に合わせた道を模索
【改正基準法の鉄骨製作に対する影響(1)】
稲垣 孝光氏(綿半テクノス 副社長)
改正法施行の7月以降、着工物件が減少し、ファブ業界は鋼材価格の上昇と「6・20不況」の嵐の中にいる。ゼネコンから受注しても確認が下りず、開店休業状態のファブも散見できる。
材料手配した後、部材変更が生じる懸念から(鋼材の)先行手配に際しては、ゼネコンから発注依頼書を貰うなど万一、設計変更になった時の自衛手段を講じるべきだ。
今後の見通しについて、3月までは季節的な要因もあって、昨年10−12よりも引き合いが低調に推移することもあり、慎重な経営の舵取りをすべきだ。改正基準法の見直しはあっても元に戻ることはない。ファブは現況を認識し、時代に合わせた対応によって生き残る道を模索すべきだ。
ファブの設計能力によって活路を拓く
【改正基準法の鉄骨製作に対する影響(2)】
矢崎 敬昌氏(エム・ワン 品質管理部長)
需要の絶対量が不足しており、確認申請の遅延で工程が読めず、3−4ヵ月もずれていくので、工場の稼働予定が立てづらい。春先に向けて鋼材価格の大幅な値上げが確実視されており、夏場にかけてさらに厳しい環境が予想される。従来は建築確認が下りた後、ディテールの変更も提案していたが、今回の改正法で出来なくなり、確認後以降はファブの意見が反映されなく、自主性や独自性が出来ない状態になった。
最近の傾向として、物件の規模や難易度に関係なく上位グレードを指定する傾向が一層強まっている。SN材使用範囲の拡大や構造特記仕様書の要求事項の多様化と工法の画一化などが顕著になっている。ファブが設計能力を高め、設計段階で建築主に分かりやすい形で提案し、反映していくことが活路になる。
設計変更の減少はコスト低減化に
【まとめ】
田中 淳夫氏(建築鉄骨構造技術支援協会会長 東京電機大学教授)
改正基準法が施行され、適判機関員からはこれまでの図書について疑問視する声も聞く。その意味では今回の改正の方向性は間違っていないと思う。ただ、実施に際しての準備期間や施行後に生じるさまざまな事態の予測が不十分であった。建築は一つひとつが異なるもので、特に鉄骨建築の場合は、設計者が必ずしも鉄骨に精通しておらず、むしろディテールなどはファブの方がよく知っている。したがって、造り込みの段階で提案を行い、技術やノウハウを反映してきた。
改正基準法によって、それが不可能になった。最初の図面通りに造れと要求するのは間違っていると思うが、法が施行された以上はこの状態が続くことになる。この状態が定着すれば、従来悩ましてきた設計変更がなくなり、コストダウンや工期短縮につながっていくと思う。悪いことばかりではない。 |